森に面した、小さな街角に、交番があります
そこで勤務しているのが、藤川さん
1年前にこの街に配属がきまった、若手のおまわりさんです

ゆらりゆるやかな5月のある午後

…りりりりんりん

交番の電話のベルをむしゃむしゃむしゃ
藤川さんは、いつも迅速対応

「はい、もしもし、こちら警察です」

…つつうつうつつ

しかし、電話の向こうは空気の国
なんにも、反応もありません

「あれれ、まちがいかな」

すると…
…りりんりりん

しかし、藤川さんが、何度、受話器に耳を
あてても
なんにも、声は返ってきません

「おかしいなあ…故障かなあ」

と、交番の入り口に目をやると

しれり

小さな、鈴虫が

さみしそうに
座っていました

…りりり

それは、季節を間違えた鈴虫さんの
迷子の泣き声だったのです

「なんだあ、キミかあ」

藤川さんは、鈴虫を
そおっと、そおっと
机の上に、乗せると

「なかないで、なかないで…
 だいじょうぶだよ
 ちゃんと、キミの季節に連れて返ってあげるから…
 なんてったって、ここは、警察、だもんね
 だから、なかないで…安心していいんだよ」

そう言いながら
支給されたばかりの最新の地図を取り出して
鈴虫の季節を探すのでした


りりり

 戻る
Copyright(C) 2006 - 2008 naohide yoshikawa , All Rights Reserved