くまのモモジの ある日のコトでした 新緑の森をとことこ歩いていると… 小さな木陰にかくれんぼするように 哀しい泣き声が聞こえてきました 小枝の隙間から覗いてみると 小さな少女がひとり 哀しい藍色のゼリーにくるまれて 泣いています 【ん?どうしてないているんだろう?…】 少女が、どうして、泣いているのか モモジにはわかりませんでしたが こんなに小さく、悲痛な泣き声は モモジには…はじめてでした 消え入るようなその声は からっぽのハチミツ箱のように、せつなくて モモジの胸で、何度も何度も跳ね返り 鳴り響き止まず… 【どこか怪我しているの?…ハチミツぬる? 大好きな彼がいなくなったの?… 誰かにヒドイことされたのかな?… 大丈夫じゃないよね?… 大丈夫じゃないよね…ハチミツでも…】 モモジは、想い、そのあまりに哀しい少女の声に なんとかしてあげたいと思う気持ちが ただ、ただ、ハチミツスプーンのように 大きく、大きく、なっていきました 【少女の悲しみをすくい取ってあげたいな】 その、想う気持ちを伝えようにも しかし、モモジは …人間の言葉がわかりませんでした 伝えるコトができず、しっぽがはがゆい モモジは、その時 いつもらしくなく ふと、良いことを思いつきました 【あっ、そうだ、ぼく、人間の言葉を勉強すればいいんだ】 モモジは、人間の少女を想い すぐに、森の駅前の人間語講座に入学手続き それが、モモジにしては、めずらしく 熱心に、毎日、毎日、雨の日も風の日も… そう、がんばったのです モモジを走らせたのは、純粋に 哀しい少女の泣き声、ただそれだけでした 勉強嫌いのモモジは そして、300と1日かけて 人間の言葉を習得しました そして…卒業した、その日 卒業証書なんて忘れて、あの少女のいた 木陰に駆けてゆきました 「どうして泣いているの」 「ぼくが助けてあげるからね」 「心配しなくたっていいよ」 「ハチミツ食べたい?」 ・ ・ ・ たくさんの人間の言葉が モモジの頭の窓辺で、カーテンを揺らします そして… そこに、あの少女はいました まだ、目は赤く、いたいたしくは、見えましたが あの、哀しい泣き声はありません それでも、モモジは聞きました 「ねえ、ね、キミ、泣いていたけど…大丈夫? あっ、ぼくは、くまのモモジ」 『えっ…うぅん、ありがとう もう、大丈夫…うん、もう平気なんだ でも…、モモジくん、ありがとう』 少女は、あの悲痛な響きとは 少し変わった声でモモジに応え 綺麗な笑顔は 安らかな気持ちすら、モモジに与えました 「そ、そう …う、うん、なら、よかった うんっ、よかったね!」 モモジは、複雑な分、でも、心から その少女にそう、想い むふふ、むふふ 負けないくらいのハチミツ笑顔を少女に ぬりかえしました 「あっ、あのねぇ、パンにハチミツぬるまえに バターをぬるとね、もっとおいしいんだよ …」 ふたりは、それから、たくさん、たくさん こんなお話して それから、また今度も お話しようねって言いました 【やっぱり人間の言葉、勉強してよかったな、らんらら…】 モモジは新しい、そして優しい新緑の森をとことこ歩きながら そう思うのでした |
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