『ごめんね』

モモジパパが
しょんぼり、今にも
泣き出しそうな顔の
モモジに言いました

『・・・』

今日はモモジと一緒に
動物園に行く約束でした

それが…今朝
リンリンリリン
突然
社長からの電話

「得意先のコトで、大事な話があるから
 大至急、出てきてくれんかのう」

どうしても、出勤しなくてはいけなくなりました

【ごめんね、モモジ】

通勤電車の中でも
パパの頭の中は…
モモジに、さみしい想いをさせてしまったコトへの
罪悪感が、吊革のように
頭の上で、ぶらぶら
ぶら下がっています

オフィスにて…

「ばっかもーんっ!

 昨日、午前中にアポとって
 午後一番であちらさんに行きました
 留守だったから、夕方まで昼寝して
 再訪問したら、あちらさんはもう
 帰って、誰もいませんでした
 だから、自分もお家に帰りました…
 で、済む問題じゃないんだよ!

 ハチミツ商事は、そんな甘かないんだ!
 うちは、あそこで、成り立ってるってことくらい
 君だって、わかっとるだろう・・・」

『はい、申し訳ございません…』
【ごめんね、モモジ】

顔を真っ赤にする社長の前でも
パパの頭の中は…
モモジに、さみしい想いをさせてしまったコトへの
つらさが、真っ赤な太陽のように
小さな心を照らし続けます

「・・・
 今が、一番、大事な時期なんだぞ
 新事業、ホットケーキ企画
 今回の話が、わたあめになったら…
 うちは、もう、おしまいまいのきりきりまいで…

 と、とにかくだ
 すぐにハチミツ商事まで行って 
 2つ指としっぽを立てて…謝って来い!」

『はい、すぐに…』
【ごめんね、モモジ】

しかし、パパの頭の中は、モモジのコトでいっぱいです

【わるいこと、しちゃったなあ
 モモジ、今頃、お家で何してるだろ…】

それから、得意先のハチミツ商事に謝罪に行き
一日かけての、平謝り

『大変、ご迷惑をおかけいたしました』

そんなパパの頭の中は…
【ごめんね、モモジ】

やっぱり、モモジと一緒に
動物園に行ってあげられなかった、罪悪感
冷たい水の砂糖が溶けません

そして
なんとか、事無きを得て帰る、帰り道も…

【モモジには悪いことしちゃったなあ】

と、ストリートに
いつもは見かけないお店屋さん

【なんだろう?】
と覗いてみると

―― 困った時のコンペイト屋さん

『へいらしゃい
 今日だけの特別、特別
 
 これは、そんじょそこらの
 コンペイトじゃないよ、お客さん
 何を隠そう
 夢の結晶が練りこんである
 奇跡のコンペイトだ

 これをひとかじり
 そうすりゃ、一発で、問題解決

 しかし、だ
 世の中、そうあまかない
 これが、残り、1袋ときたもんだ

 さあ、お客さん、どうします?』
  
パパは迷わず
そのコンペイトを買いました

そして、迷わず
社長ではなく…
得意先にではなく…
モモジにそのコンペイトを
渡そうと思いました

「こんなので、許してもらえるなんて
 思ってはいないけど…
 奇跡のコンペイトかぁ…
 モモジに何か
 素敵なコトが起きるといいなあ」

パパは、そうつぶやきながら

愛するモモジの待つ
お家に帰ってゆきました

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