ぼくの親戚に、浮浪者みたいな、クマのおじさんがいました
親戚中のみんなから、厄介者あつかいされ、
身寄りもない中,僕のお父さんだけがおじさんをかばい、
警察に保護された時も引き取りに行っていました
クマのような身なりの汚い格好をした、そんなおじさんを、
お母さんも、僕の兄弟もみんな、
嫌っていたので、お父さんが家にいない時は、
のら犬を追い払うように、おじさんを追い返していました
ぼくはというと、小さい頃、遊んでもらった記憶があったのかなぜか、
追い返されるおじさんの姿を悲しく ただ、眺めていたただけでした
そして、ぼくは、理由もなく、不思議と、胸がしぼんでくるのでした
そんなある、寒い秋の夜でした  おじさんが、やってきました
少し、お酒のニオイのするおじさんが 
「これさ、おみやげ」 と言って立派な鮭をもって、上がり込んできたのです
 運わるく、この日、お父さんは、不在でした
『まあ、ずうずうしい、お酒に酔ってあがりこんでくるなんて…、
     そんなおみやげなんて、いらないから、さっさとでてってください!』
お母さんは、有無を言わず、おじさんを追い返しました
もう、外は凍えるような、つらい季節です
おじさんは、お母さんが、おみやげの鮭に喜び、
そして、唯一、自分を受け入れてくれていたお父さんと
鮭を食べながら、何か話したかったに違いない、
無理して、高価な鮭を買ってきたんだと、思います
おじさんは僕に優しく笑って、言われるがまま、
何も言い返さずうつむきながら、出て行きました
僕は、その日のおじさんの後姿が、妙に目に焼きついて、離れませんでした
そして、その日を境に、おじさんは、全く、姿を現さなくなりました

木の葉の消え去った木々に雪がホロホロとつもりはじめる頃、
警察から1本の電話が入りました
あのおじさんが、公園で死んでいたというのです
傍らには、大きな鮭が、一切、
手のつけられていない状態でころがり、誰からも見守られるコトなく、
息を引き取っていたそうです

帰る家もなく、家族もなく、親戚中から、冷たくされ、
あの日も、文句ひとつ言わないで、家を出て行った
クマのおじさん  ヒトに優しくされるコトなく、
孤独なはずなのに優しくわらっていた、クマのおじさん
本当に本当に、寂しかったと思います
おじさんから、感じていた、不思議な想いに胸がしぼんでくるのは…
真に寂しさを知る、おじさんだったからこそ、
何か、言葉にできない優しさを持っていたんだ…って
何度か秋を経験した後でわかりました
   いつも、この季節になると、鮭をもったおじさんの後姿を、僕は思い出します

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