森に面した、小さな街角に、交番があります そこで勤務しているのが、藤川さん 1年前にこの街に配属がきまった、若手のおまわりさんです のどかな交番の昼さがり… 先月からの文書の整理がまだ終わらない、藤川さんは ため息をひとつ、つきました 「はあ… こんなの一人じゃ無理だ、ネコの手も借りたいくらだよまったく …にゃあにゃあ…ぶつぶつ…」 昨日から徹夜ですが、机の上には、 まだまだまとまらないノートやらファイルやらが、どっさり山積みです 「こりゃ、ノートで、富士山が出来上がるぞ…あはは…」 そんな一人言を言った後でした ふと 小さな小さな男の子が今にも泣きそうな顔で、交番の前につっ立っています おや?迷子かな、見かけない顔だけど… 「ぼうや、どうしたんだい?」 藤川さんがそう言って、入り口の方へ近寄ると…そりゃもう、おったまげました ま、まいご?…男の子と同じくらいの小さな小さな子が20、いや30人くらい 交番の周りに、泣きそうな顔をして、立っているのです みんな、どことなく似ていましたが、やっぱりみんな違いました と、そんなコトよりも、藤川さんはもう、ため息どころではありません 「わあわあ、こんなにたくさんの迷子は始めてだ… これを一人で…どうやって…わあわあ…たじたじ…」 とにかく、みんなの顔を見回して 「迷子かい?お母さんは?どこからきたのかな?…」 しかし、子供達は、だまぁって、何もしゃべりません 泣きそうな顔をして、ただ、じーっと、藤川さんを見てるだけなのです 本部に応援を、ようせいしよう 藤川さんがそう思った時でした 一人の男の子が、どこかへ向かって、いきなり走り出しました 「おいおい、まちなさい、迷子が一人、別行動はいかんよ、まち…」 すると、子供達全員が、同じ方向に向かって、走り出します 藤川さんは、交番の看板を【じゅんかいちゅう】 にひっくり返して、 いそいで、子供達を追いかけました 今日はさんざんな日だ… 藤川さんは、ため息をはあはあ出して、子供達を追いかけます 知らない人が見ると、まるで、親子運動会の徒競走のように見えたに違いありません 橋の手前の土手の上で、ピタッと子供達は、そろって立ち止まりました みんな、不安げに、川の方のある一点を見ています 泣きそうな顔が、しわくちゃになっています はあはあはあ…息切れしながら追いついた藤川さんが、 前かがみ、ひざに手をあてて、その方を見てみると カエルがヘビににらまれて今にも、食べられそう 子供達は、泣き出しそうに早く早くといった表情を藤川さんにおくります 「こりゃ大変だ、ヘビは得意じゃないんだけど…」 言うが早いか、藤川さんは、走って川岸まで駆け下りると、 こりゃ!っと、ヘビを追っ払いました はあ、逃げてくれて助かった…さて、本業本業と、土手に上がろうと、振り向くと… 「へ?」 藤川さんは目をぱちくりぱちくり ほんの今まで、土手にそろって、並んでいた子供達は一人もいません まさか、今の間に、みんなお母さんを見つけたのかな いや、まさかね あぁ元々、遠足でこの土手に遊びに来た隣町の園児たちだったんだな… きっと、そうだ、一件落着だ、うん 気が張ってくたくたの藤川さんが、歩いて交番に戻ってくると “おたまじゃくし”のカタチしたクッキーが、一箱、入り口に置いてありました 「やれやれ、落し物か…忙しい時は、重なるもんだなあ まったく…けろけろ…ぶつぶつ…」 藤川さんはそう言って 【じゅんかいちゅう】 の看板をひっくり返しました |
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